1 手続が簡便となること
遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行い、全員の合意がなければ遺産分割協議が成立しないため、どうしても手間や時間がかかります。
これに対し、遺言書が作成されている場合、遺産分割協議を行う必要はありません。
自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所で検認を受ける必要がありますが、それほど難しい手続ではありませんし、相続人1名で申立てすることができます。
公正証書遺言であれば、検認手続すら必要ありません。
したがって、遺言書が存在すると、速やかに遺産の名義変更を行うことができます。
2 作成者の意思が反映されること
遺言書がない場合、相続人全員が、遺産分割協議を行いますが、必ずしも法定相続分通りに分ける必要はありません。
例えば、配偶者と子2名が相続人の場合、配偶者が2分の1、子が各4分の1の相続分ですが、子1名が全ての財産を相続するという遺産分割協議を成立させることも可能です。
つまり、被相続人としては、相続人には法定相続分通りに分けてもらえばよいと思っていたとしても、法定相続分通りにならない相続がなされる場合があります。
これに対し、遺言書を作成すると、相続手続に作成者の意思が反映されます。
例えば、配偶者に不動産と一部の預貯金を相続させる(遺産の4分の3に相当する額)、子2名に残りの預貯金を相続させる(遺産の各8分の1に相当する額)といった内容の遺言であれば、その内容通りに実現できます。
また、配偶者にすべてを相続させるという内容の遺言だった場合、子2名は遺留分減殺請求権を行使できますが、その権利を行使するか否かは自由ですので、子2名が、亡くなられた方の意思を尊重し、配偶者がすべての遺産を相続することに同意する例もあります。