弁護士の工藤です。
読売新聞に、民事裁判の訴訟手続きについて最高裁がIT化を推進する方針を固めたとの記事が掲載されていました。
http://www.yomiuri.co.jp/national/20170830-OYT1T50068.html
今年6月に内閣で閣議決定された未来投資戦略2017においても、裁判手続のIT化の推進が盛り込まれています。
IT化の対象となる項目は以下の2点です。
①インターネットを通じた書面の提出
②テレビを使った審理の拡充
①について、現行の民事訴訟法では、裁判所に提出される書面は紙媒体で提出することとなっており、現状では持参・郵送・FAXなどの方法で裁判所に書面を提出しています。
しかしこの書面は時として膨大な量となることがあり、紙媒体での提出は訴訟当事者の大きな負担となっていました。
このような負担の軽減や紙媒体を使わないことによる経費削減の観点から、インターネットを通じた書面提出が推進されることとなりました。
ドイツにおいては「裁判所から紙が消える日が近づいている」とも言われており、2022年1月までに裁判所に提出される書面は全て電子化されるとのことです。
②について、現状では当事者や証人がすべて裁判所に集まって審理を行うことが原則となっています。裁判は平日の日中に開かれるため、特に弁護士などの代理人をつけない裁判(本人訴訟)の場合は出廷予定者の日程調整が難しく、次回期日が先延ばしになるという問題点がありました。※電話による弁論準備は認められています。
そこで、テレビ会議システムを積極的に利用することで、交通面での負担軽減やより柔軟に期日指定が可能となるので、訴訟期間が短縮されることが予想されています。
国土が日本の25倍ほどもあるアメリカにおいては、裁判出席が当事者等の負担となる場合が少なくないため、このような裁判手続きのIT化が積極的に行われています。
日本においてはまだ推進の方針を固めたという段階ですが、いつから手続きの変更が適用されるのかなど、今後も注目していきたいと思います。